こんにちは。国家検定1級和裁士着物仕立て装々です。
総絞りの振袖をお仕立てさせていただきましたので
今回は総絞りの着物の裏打ちについて解説します。
総絞りの着物の裏打ち解説
着物の総絞りについて
**総絞り(そうしぼり)**は、日本の伝統的な染色技法の一つで、布を絞ることで独特の模様を作り出す方法です。裏打ちの前に総絞りの特徴や歴史、技術について詳しく説明します。
特徴
- 模様: 総絞りでは、布全体にわたって絞りの模様が施されます。これにより、非常に美しいグラデーションや複雑なデザインが生まれます。
- 手作業: この技法は主に手作業で行われ、職人の技術が重要です。時間と労力がかかるため、高価なものが多いです。
- 素材: 絞り染めは、主に絹や綿の布に施されます。絹の光沢感が特に美しいとされています。
歴史
- 起源: 総絞りは、奈良時代(710-794年)にその起源を持つとされ、平安時代(794-1185年)には貴族や武士の間で人気を博しました。
- 発展: 江戸時代(1603-1868年)には、庶民の間でも広まり、様々なデザインが生まれました。
技術
- 絞りの準備: 布を絞る部分を決め、糸で縛ります。
- 染色: 絞った部分を染料に浸し、色をつけます。絞りの部分は染まらないため、模様が形成されます。
- 乾燥: 染色後、布を乾燥させ、絞りを解くことで模様が現れます。
裏打ちについて
総絞りの着物は反物を絞り、生地がポコポコ凹凸がありとても可愛いですよね。
このポコポコが広がらないようにと形状記憶のような感じで加工してありますが
何度も着ていると膝下など絞りが伸びてしまいます。
この絞りが伸びてしまわないように裏に薄い「ゴース」という生地を縫い付けます。
このゴースを縫い付けする作業を「裏打ち」といいます。
最近は膝下だけの裏打ちや、予算的に?裏打ちをしない総絞りも多くなりましたが
裏打ち仕立ての着物はとても温かく、型崩れしないのでよい反物を手に入れた場合はぜひ裏打ちをおすすめします。
反物を手に入れたら呉服屋さんや悉皆屋さんで幅出し加工をします。
反物幅が十分にあれば幅出し加工は必要ありません
今回の写真の反物は総絞り振袖なので柄合わせを何となくしつつ裏打ち後で柄を合わせながらお仕立てするのですが、
少々難易度が高いので柄のない総絞りの着物の裏打ち、お仕立てのやり方を解説します。
裏打ちに使う材料
ゴース
ゴースという、とても薄い生地を使います。
絹製のオーガンジーのようなイメージですね。
↑お値段をご覧ください( ´∀` )
絹のミシン糸
細い絹のミシン糸で縫っていきます。
平和チャコ
裏打ちの場合は全ての縫い線をチャコで線引きしますが、衿肩明きを後で切るので印を間違えない様、色を変えます。
というわけで4色入がおすすめ。
裏打ちのやり方
さっくり解説
- 裁断、糸印
- 表地とゴースの裾作り
- ↑裾を台に固定
- ゆるみを作り肩山を固定
- アイロンで地直し
- チャコで印付け
- 裏打ち
- 2~7を繰り返す
じっくり解説
1.裁断、糸印
●まずは絞りの表生地を通常の袷着物と同じように裁断します。
裏打ちを間違えない様に背縫いや前袖、衽の糸印をしておきます。
↓肩山と衿肩明きも糸印をします。
裁断後に裏打ちをする時にアイロンで地直しをしますので反物の長さが短い場合でも縮む分を5分位余分に見積もります。
絞ってあるので地の目が見えにくいですが、耳に切り込みを入れて横糸を1本引っ張ると地の目で切ることができます。
2.表地とゴースの裾作り
●ゴースの布端も地の目で切って表生地の裏面に重ねます。
ここが後ろ身頃の裾になります。
表生地とゴースの布幅が違うと思いますので
背縫いの糸印を確認して背縫い側を仕立て台の手前に揃え
表地の背縫い側とゴースの背縫い側を綺麗に揃えるようにします。
●ちなみに一枚ずつ裏打ちをしますが、左右対称にしますのでもう一枚の身頃は
前身頃衽付けの方を右に揃えて前身頃から裏打ちをします。
3.裾を台に固定
●通常の印付けのように台の上に裾と背縫い(衽付け)を揃えてクリップで固定します。
いつもは左右身頃を重ねて台に置きますが、裏打ちは一枚だけ広げておきます。
4.ゆるみを作り肩山を固定
●表地を緩めておいてゴースを重ねます。
表地は裾から肩までで5分位ゆるめておき、上に乗せたゴースはピンと張って
表地に付けた肩山の糸印所のゴースの糸を引いて目安にします
●↓ゴースの肩山と表地の肩山を合わせ針打ちします。
針の所が肩山ですね。
右側の表地生地がゆるいのが分かりますか?
↑後ろ身頃だけでこれくらい縮めます。
この緩みをアイロンで地直ししつつ縮めていきます。
裾はクリップ、肩山の印より少し先の所に文鎮をおいてゴースが緩まないように固定します。
5.アイロンで地直し
アイロンで地直し。
絶対に蒸気をかけないで!
絞りの着物は蒸気でびっくりする程縮みます
中温の蒸気なしアイロンでゆっくり縮めます。
何度か往復する間に結構縮められると思います。
1回で全部縮む場合はもう少し表地を緩めてさらに地詰めします。
5〜6往復ししても全部縮まらない場合はもう少し表地の緩みを少なく調整。
最初のこの時にどのくらい縮むか確認し
全部同じ位の縮め具合で地直ししますので覚えておきましょう。
一度に表地全部地直しせずに、
身頃の場合は
後ろ身頃の裾にゴース付け
→肩山決め
→地直し
→印付け
→裏打ち
→裾クリップを外して反物をずらす
→前身頃の裾にゴース付け
→地直し
→裏打ち
という感じで2回(身丈が長い場合は3回)に分けて裏打ちします。
6.チャコで印付け
通常の印付けの様に合印を書きますが、後で縫い線に折り筋をしても見えないので全ての縫い線に線を引きます。
↑結構がっつりと書いてあります。
7.裏打ち
斜めに生地を掬っていきます。
写真は袖です。
右のチャコ線より右側は袖底の縫い代なので縫い線を少し所で跨いだ所でターンします。
衿肩明きは表地の糸印を写します。
縫い線と間違えない様にピンクのチャコで書いてあります。
写真を拡大して見てみますと
衿肩明きの切り込みを裏打ちの糸が跨がないようになっています。
後で衿肩明きを切った時に裏打ち糸を切らない様にする為ですね。
縫い目を書いてみた
赤の線が絹のミシン糸の所です。
白い線は袖底と袖付けですね。
↓同じ写真です。よく見ると糸目が見えるでしょうか?
基本的にチャコ線で仕立てていきますが、振りは曲がりやすいので
お袖を縫って最後に振りの印付け。印はゴースにコテ跡が付きますのでゴースのコテ跡を頼りに仕立てます。
さて、後は頑張って延々と身頃2枚と袖2枚、衽2枚を同じ様に地直し、印付け、裏打ちをします。
衿はモコモコにならない様に私は裏打ちはしません。
これは好みによりますので衿も裏打ちしても大丈夫です。
裏打ちしたらお仕立てします。
裏打ちしたら↓通常の表縫いの様に縫っていきます。
チャコでがっつり線が引いてありますのでサクサク縫えますね。
きちんと裏打ちされているのでズレる事はありませんので特に気にせず普通に縫えると思います。
衿肩明きはかけ衿の柄合わせを見てから切ります。
衿肩明きを切る時は何年たってもドキドキします
表と裏地を別々に縫って
裾合わせ↓
そして
総柄の振袖完成で〜す
目分量で地直ししつつ総柄合わせという神業!
褒めていただけるととっても嬉しいです(*´ω`*)
裏打ち済の反物の場合
絞りの着物で反物のまま裏打ちをして売っているものもあります。
これは裏打ち専門の方が先に裏打ちしてるものもです。
基本的に裁断前に裏打ちしていますので、この様な反物をお仕立てする場合は
同じ様に通常の裁断をして、裏打ち糸が解けてこないように切った糸先を全部玉止めします。
今回の解説でした一番最初の裾の縫い止めはしたほうがいいですが(これ↓)
裏打ち糸は切って玉止めすれば多少ゆるんでいても大丈夫だと思います。
後記
今回は絞りの裏打ちについて解説してみました。
実際にプチプチしている動画を貼ろうと思ったのですが、Youtube経由じゃないと貼れないみたいなので
後日動画編集してUPしますね。
久しぶりの動画編集で時間はかかるは、フリーズしまくるは( ノД`)シクシク…
でもAmazonセールで自分にプレゼント買っちゃったからかんばります。
ということで装々さんの和装ブラも好評販売中ですのでこの機会にぜひ!
最後まで読んでくださってありがとうございました。着物仕立て装々でした。バイバーイ。
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